クリニックレター
2021.03.15
クリニックレターvol.49 特別編 「新型コロナウイルスワクチンのアナフィラキシーについて」
2021年2月17日より日本でも医療従事者から新型コロナワクチンの接種が開始となりました。ただ、連日、様々なメディアを 通じて『新型コロナワクチンでアナフィラキシー』が報道されて います。厚生労働省によると、国内では3月13日午後5時までに、アメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの接種が医療従事者に対して22万7194回行われました。
このうち医療機関が報告を取り消した1件を除く36件について、接種後、アナフィラキシーの疑いがある症状が確認されたと医療機関から報告があったということです。割合にすると5033件に1件で、アメリカでの報告のおよそ42倍、イギリスのおよそ11倍となっています。
ただ、3月9日までに国内で報告された17件について「ブライトン分類」と呼ばれる国際的な評価指標に基づいて分析した結果、アナフィラキシーに該当したのはおよそ4割の7件だったということです。
残る10件は十分な情報がなく判断ができないか、アナフィラキシーでないと評価されたということです。
また、接種後にくも膜下出血を起こして死亡した60代女性については「接種との因果関係が評価できない」としました。
では、アナフィラキシーとは何でしょうか?アナフィラキシーショックとの違いは?
アナフィラキシーは、『アレルゲン等が体にはいってくることで、ふたつ以上の臓器に、そして全身にアレルギー症状が起こる、いのちに危険がおよぶ可能性のある過敏な反応』 のことです。
たとえば、臓器とは、体のそれぞれのパーツで、
- 皮膚(じんましん、赤くなるなど)
- 呼吸器(咳やぜいぜい、呼吸が苦しくなるなど)
- 循環器の症状(血圧が下がったり、意識障害を起こす)
- 消化器(何度も吐く、つよい腹痛など)
といった症状のグループのうち、ふたつの臓器にわたって症状が急速に広がるのがアナフィラキシーです。
特に、アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合を 『アナフィラキシーショック』といいます。この場合は、必ずしも皮ふの症状などは明らかでなくても診断されます。
つまり、アナフィラキシーは心配な症状ではありますが、『アナフィラキシーショック』とは必ずしも言えません。速やかな対処で回復することが多いということです。
たとえば、じんましんがたくさん出て、同時に呼吸が苦しくなった(=2つの臓器に症状があり、全身に広がった)場合はアナフィラキシーですが、血圧が下がったり意識状態がしっかりしていればアナフィラキシーショックではないということになります。
よく、『ショックを起こさなかったからアナフィラキシーではないですよね?』と言われる方もいらっしゃいますが、そういうわけではないということです。
ここまでで言えることは、新型コロナワクチンに関し『アナフィラキシーを起こす可能性はあるけれども、それは必ずしもアナフィラキシーショックではない』ということ、そして現在のところ、適切な処置でみなさん回復していることです。
今回は、ワクチンのネガティブな面ばかり述べましたが、それでもワクチンの重要性は変わりません。もちろん接種にリスクがあることは間違いありませんが、リスクとメリットを比較して、メリットの方がはるかに大きいということを理解していただければ幸いです。
**今回の文章やシェーマにあたり、国立成育医療研究センター小児アレルギー科医 堀向健太先生の文章、シェーマ、これでわかる!新型コロナワクチン情報のサイト、COV-NAVIのサイトから引用させていただきました。