クリニックレター
2021.04.02
クリニックレターvol.50 特別編「新型コロナウイルス変異株について」
本日は「変異株」について、ご紹介します。日本感染症学会では2021年1月27日、報道機関向けに声明を発表し、新型コロナウイルスの「変異株」を「変異種」と表記しているメディアに対して「これは学術的には誤用となりますので、今後は「変異株」と正しく表記していただきたくお願い申し上げます」と要望を行っています。
変異種という言い方ですと、全く違ったウイルスという意味です。変異株というのは、感染が広まっていく中でウイルスが何度も増殖していく過程で、コピーミスによって少しずつ遺伝子が変わっていったものを指しています。ですので、ウイルス自体は変わらず、コロナウイルスなのですが、一部の顔つきが変わるようなものであるとご理解いただければと思います。
現在「N501Yと言われるある変異株」は、従来株よりも感染力が増していることが懸念されており、英国変異株(VOC202012/01)や南アフリカ変異株(501Y.V2)、ブラジル変異株(501Y.V3)がこの変異を起こしていると言われています。
また、直近では新たに「E484Kという変異株」が話題になっています。こちらは感染力の増強に加えて、ワクチンの有効性が弱まる可能性があるという事がメディアで話題になっています。
厚生労働省としては、引き続き、各国政府やWHO、専門家等とも連携しつつ、諸外国の感染状況を踏まえて対策を検討するという事です。
色々と日々「一部の変異株にワクチンは無効かも」というようなメディアなどの情報発信に対して不安になる方も多いと思います。
ただ元々のウイルスには有効であることは判明していますし、変異株に対しても無効ということが明確に立証されたわけではありません。重症化を防ぐという可能性の側面で見ても現時点ではワクチン接種をすること自体にネガティブになる必要はありません。
アストラゼネカのワクチンで評価データに古いデータがあり、報告されていた数値に微修正があったというニュースもありました。発症予防が79%→76%に修正されましたが、重症化の予防効果は100%で変わらないとされています。一時は欧州で「血栓」のリスクありというニュースもありましたが、明確な因果関係はないとWHOがワクチン接種を止めないように呼び掛けています (3月15日時点)
こういった臨床試験については、製薬会社だけが独立してデータを公表していくわけではなく、モニターを行う委員会があり、そこからの指摘で修正されたという経緯です。このような厳格な体制で検証されて、日本でも当局審査を経たワクチンが提供される流れになりますので、ご安心いただきたいです。
最後になりますが、ウイルスの変異は今回のコロナウイルスだけで起こることではありません。ウイルスとは常に変異を起こしていくリスクが付きまとうものです。 このように目まぐるしく変動していく状況ではありますが、皆さんにお願いする日常の気を付ける行動は変わりません。
3密(特にリスクの高い5つの場面)の回避、マスクの着用、手洗いなどの対策は、これまでと同様に有効です。
慌てることなく、今まで通りのコロナとの共存を目指した生活スタイルの維持をくれぐれもよろしくお願いたします。