クリニックレター
2023.06.05
クリニックレターvol.78「生活習慣病における高血圧について」
健康診断や人間ドックなどで血圧を測定したら基準値より高かったというご経験をされた方もいらっしゃると思います。前回の糖尿病に続き、今月は生活習慣病の第2弾として、「高血圧」を特集します。
【高血圧とはどんな病気?】
高血圧とは、安静状態での血圧が慢性的に正常値より高い状態のことを指します。血圧でよく言われる「上の血圧」とは、心臓が収縮した時の血圧で収縮期血圧と言い、「下の血圧」とは、心臓が拡張した時の血圧で拡張期血圧と言います。
※血圧は気温の変化や体を動かすことで一時的に変動もしますが、こういったものは高血圧ではありません。
【高血圧の基準値は?】
高血圧の診断では、診察室で測定した血圧(診察室血圧)や家庭で測定した血圧(家庭血圧)の2つの数値に基づいて行われます。
一般的には「診察室血圧が140/90mmHg以上」「家庭血圧が135/85mmHg」のいずれかで高血圧と診断されます。診察室で血圧を測定すると、診察室内という特殊な環境から血圧が高くなる方が多いため、診察室血圧の基準は家庭血圧の基準より少し高く設定されています。
【家庭血圧の測り方】
- 家で血圧を測る場合、上腕カフ(腕帯)血圧計 (上腕部分に『カフ』と呼ばれる細長い袋状の布を巻いて測定するタイプの血圧計) が推奨されています。手首に装着する血圧計は持ち運びも簡単であり、ご高齢の方には好評ですが、測定結果が不正確になる場合があります。
- 静かで適当な室温で安静な状態での測定をできるだけ心がけましょう。
- 測定のタイミングは1日2度(朝と夜)に測定しましょう。
朝➡朝の起床後1時間以内、排尿後、朝食や薬を飲む前
夜➡就寝前が推奨されています。 - 測る腕の部分と心臓を同じ高さに保ってください。また、1機会に2回ずつ測定してください。
※入浴、飲酒、食事の直後の測定は避ける必要があります
【高血圧になるとかかりやすくなる病気】
高血圧が長い間持続するとおこる主な病気は下記のようなものになります。
- 脳血管に関する病気
高血圧による脳血管障害として、脳卒中(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)の原因となります。 - 心臓に関する病気
高血圧による心臓負荷のため、心筋肥大や心臓を取り囲み、栄養や酸素を供給する血管(冠動脈)が詰まる狭心症や心筋梗塞などの原因となります。 - 腎臓に関する病気
高血圧が長期化すると、細かい血管がたくさんある腎臓での障害(腎硬化症など)を併発しやすくなります。 - 大動脈に関する病気
高血圧による血管の負荷のため、脳血管や大動脈を中心に血管の瘤(こぶ)が形成されやすくなります。結果、脳動脈瘤(りゅう)や胸部、腹部の大動脈瘤となり、高血圧持続により脆弱になった血管の瘤が裂けたり(大動脈(だいどうみゃく)解離(かいり))、破裂(はれつ)(動脈(どうみゃく)瘤(りゅう)破裂(はれつ))の原因ともなります。
【高血圧の予防には】
高血圧の予防には一番には「減塩=食塩摂取量の制限」と言われています。日本高血圧学会は、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることを強く推奨しています。他には野菜や果物、大豆製品に豊富に含まれるカリウムには腎臓から食塩を排泄しやすくする働きがあります(腎臓の病気がある人はカリウム摂取の制限が必要な場合があるので、主治医と相談する必要があります)。また、肥り過ぎに注意しましょう。体重過多(BMIが25以上)の人は、体重減少にて血圧の低下が期待出来ます。
【最後に】
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれています。症状がないからといって放置することなく、高血圧と診断されれば、お早めにかかりつけの先生へご相談してください。