クリニックレター
2023.07.04
クリニックレターvol.79 「生活習慣病における脂質異常症について」
健康診断や人間ドックなどの血液検査の結果から「脂質異常症」を指摘された方もいると思います。今回は「生活習慣病における」の第3弾として「脂質異常症」を特集します。脂質の基準値などは、各施設での検査会社によってばらつきがありますが、今回、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版を参考に説明します。
【脂質異常症って何?】
脂質異常症とは、血液中にふくまれるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)などの脂質が、下記の基準を1つでも超えている場合を指します。
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い
LDLコレステロール値140mg/dL以上 - 善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ない
HDLコレステロール値40mg/dL未満 - 中性脂肪が多い
中性脂肪150mg/dL以上 (空腹時採血*)
中性脂肪175mg/dL以上 (随時採血)
* 基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とします。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可です。 空腹時であることが確認できない場合を「随時」とします。
今回は簡略化しているため、Non-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを除いたもの)の値は省力します。
【脂質異常症の何が怖いのか】
悪玉(LDL)と善玉(HDL)は、同じコレステロールです。実はコレステロールは血液の中に溶け込めません。2つのコレステロールの役割はからだの隅々までコレステロールを運ぶ働きをしているものを「悪玉」、反対に体内から余分なコレステロールを回収する働きをしているものを「善玉」と呼んでいます。
悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低いと、余分なコレステロールが処理されず血液に溶け込めないコレステロールが血管にへばり付き動脈硬化を促していきます。よって心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などの病気へ進行していく可能性が高くなると言われています。
【脂質異常症の原因は?】
様々な要因が考えられますが代表的なものとしては下記のようなことが考えられます※。
- LDLコレステロールが高い場合
男女とも加齢による影響もあります。特に女性では、閉経を過ぎるとLDLコレステロールが上昇しますが、食事による関与も多いです。動物性脂肪の多い食品(肉類、乳製品)やコレステロールを多く含む食品(鶏卵、魚卵、レバーなど)を多量に摂取していると増える可能性が高いと言われています。慢性的にカロリー過多になると増え続けていきます。
- 中性脂肪が高い場合
食べすぎ、飲みすぎ、高カロリー食品(糖分や脂肪分が多いもの)を摂取しすぎて慢性的なカロリー過多が中性脂肪を蓄積してしまうと考えられています。特にアルコールの飲みすぎも要因と言われているのでご注意ください。
- HDLコレステロールが少ない場合
HDLコレステロール単独では薬物介入の対象とはなりません。原因不明な場合もありますが、運動不足、肥満、喫煙などが原因として考えられています。
『家族性高コレステロール血症』
若くして、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすく、レセプター異常などの遺伝的要因が関与し、幼少期よりLDLコレステロール値が異常に高くなります。非常にハイリスクであり、診断基準など含め、別疾患として分類されています。採血でLDLコレステロール値が200mg/dl以上あれば可能性があります。もし、当てはまるのであれば、早めに病院を受診してください。
【脂質異常症に対しての対策】
食生活の改善、禁煙、運動不足の解消などの生活習慣を改善することが第一です。
ただし、これでも改善できない場合は薬物療法を行うことになります。
【最後に】
今回、生活習慣病に関してシリーズ連載を行いましたが、動脈硬化の危険因子として下記があげられています。
- 年齢(男性は45歳以上、女性は55歳以上)
- 高血圧
- 糖尿病
- 喫煙
- 心筋梗塞や狭心症の家族歴
- 善玉(HDL)コレステロールが低いなど
動脈硬化の危険因子をいくつ持っているかでリスクが変わってきます。
東大阪市の保健センターでは、健康教育および健康相談について集団健康教室を無償で行っています。少しずつ今までの生活習慣を改善していけるようにぜひご活用ください。