クリニックレターvol.80「急増していると言われる梅毒について」

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2023.08.07

クリニックレターvol.80「急増していると言われる梅毒について」

2021年から2年連続で感染者数が過去最多を更新していると言われる感染症の梅毒についてご存知でしょうか。この感染症は2000 年から 2012 年までは年間 500~800人くらいのそれほど多くはない病気でしたが、2021年には7873人、2022年には1万2966人と急増しています。先日、国立感染症研究所では今年6月25日までの梅毒患者数を7124人と発表しています(下図参照)。コロナ禍で急増しているこの感染症に今回はフォーカスしてみたいと思います。

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出典:国立感染症研究所より

【梅毒とは何か】

性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌が粘膜から感染することによって起こる病気です。性行為によって、梅毒トレポネーマが口や性器の粘膜や皮膚接触から感染することで引き起こされると言われています。

【性別や年齢差はどうなのか】

男性は、満遍なく20-40歳代に多いですが、女性は男性に比べて圧倒的に若い年齢に分布が集中しており、20-24歳が最も多いと言われています。

【なぜ増えてきたのか】

梅毒に限らず、性感染症は全般的に増えていますが、増加の理由は分かっていません。一部ではSNSなどで出会った相手との性交渉などが指摘されていますが、それで全ては説明できず推測の域をすぎないと言われています。

【梅毒の症状】

梅毒は、感染してからの期間に応じ、大きく「1期」「2期」「3期」「4期」の4つの病期に分かれます(下図参照)。症状は各病期で異なり、4期まで病状が進行すると、死に至る危険すらあります。

vol80_img2.png出典:梅毒診療ガイドより作図

症状が多岐に渡り、初診時では「梅毒かな?」と疑って診察しなければ、診断がかなり難しい疾患です。梅毒を診断したことがない医師も多く、泌尿器科や婦人科の専門医を受診するのも選択肢の一つです。

【どのような検査があるのか?】

 一般的には、医師による診察と、血液検査(抗体検査)により、梅毒にかかっているかどうかが判断されます。採血検査にて行うことができる、TP(梅毒トレポネーマ抗体)とRPRという二つの抗体検査の結果を見て判断します。

TP:過去に、梅毒にかかったことがあるかどうか?
RPR:梅毒の現在の活動性

つまり、梅毒に一度感染して、きちんと治療を受けると、TPは陽性のままですが、RPRは陰性となります。しかし、例外ケースもあるため、注意が必要です。

梅毒は、多彩な症状や病態を示すことから、「偽装の達人」とも呼ばれます。症状が起こればもちろんのこと、たとえ無症状でも性感染症にかかっているのではないかと気になる(心配な性行為をしてしまったあとなど)ときは、検査を受けることをおすすめいたします。

【治療法は?】

国内では、ペニシリン系の抗生物質の長期内服治療が一般的に行われています。医師の許可を得るまでは、症状が良くなっても、自己判断で内服を中断しないようにしましょう。また、医師が安全と判断するまでは、性交渉等の感染拡大につながる行為は控えましょう。

【最後に】

梅毒には予防ワクチンはありません。「梅毒は一度かかると、体内に抗体が残り続ける」と言われています。しかし、初期梅毒(1~2期)の段階できちんと治療すれば、梅毒は完治します。梅毒は早期検査・早期治療がとても大切です。少しでも疑わしい症状が現れたら、最寄りの医療機関にご相談ください。

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