クリニックレター
2023.09.02
クリニックレターvol.81 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
充分な睡眠時間をとっているのに、日中の倦怠感や眠気、もしくは睡眠中に大きないびきをかいたり、息が止まったりしていると、ご家族やパートナーから指摘されたことはありませんか? もしかすると、それは「睡眠時無呼吸症候群」かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=通称SAS)は眠り出すと文字通り、呼吸が止まってしまう病気です(10秒以上で1時間当たり5回以上)。国内でも2020年で940万人ほどの潜在患者さんがいると言われています。10秒以上呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、目が覚めて再び呼吸し始めますが、眠り出すとまた止まってしまいます。これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなり、日中に強い眠気が出てきます。
どんな病気なのか?
SASでは、のどが閉じることで起こる「閉塞性(へいそくせい)」と脳や神経の異常で起こる「中枢性」の2種類があります。日本ではほとんどが閉塞性と言われています。
体内の酸素濃度が下がるため、これを補うために心臓の働きが強まり、高血圧となります。次第に酸素濃度の低下により動脈硬化も進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。特記すべきことは、交通事故の発生率が一般のドライバーと比較して、7倍の発生率があると言われています。運転中に急激な眠気に襲われ、交通事故・産業事故により人命が失われたり、社会的な損失を与えてしまった報告や報道が多くされています。
フクダ電子HPより
どんな人が当てはまるのか
発症しやすい人の最大の特徴は、首が太くて、短い肥満の方と言われています。首の周囲に脂肪がつくとのどが狭くなるためです。瘦せていても日本人は顎が小さく、気道が狭いのでSASになりやすいと言われています。一見男性が多そうに思われがちですが、男女差はないと言われています。
下記のようなご家族の指摘や思い当たる節がある方は医師へのご相談をおすすめします。
寝ているとき
- いびきをかく
- いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかき始める
- 呼吸が止まる
- 呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
- むせる
- 何度も目が覚める(お手洗いに起きる)
- 寝汗をかく
起きたとき
- 口が渇いている
- 頭が痛い、ズキズキする
- 熟睡感がない
- すっきり起きられない
- 身体が重いと感じる
起きているとき(日中)
- 強い眠気がある
- だるさ、倦怠感がある
- 集中力が続かない
- いつも疲労感がある
SASの診断法は?
SASを診断する際はまずは自宅で睡眠中の体内の酸素飽和度を測定する機器(パルスオキシメーター)をつけて一晩検査を行います(簡易ポリグラフィー検査)
その検査結果でSASの疑いがあればクリニックの指示に従って、本格的な治療に進むかどうか判断することになります。
SASの治療法は?
主な治療としては、CPAP(シーパップ)という鼻に専用のマスクをつけて空気を強制的に送り込むことで喉が閉塞せずに酸素を取り入れることができるという治療法です。マスクをバンドで固定して眠ることになるため、最初は不慣れな印象を持たれる方は多いと思いますが慣れると熟睡しやすくなります。
どこで受診できるのか
循環器科、呼吸器科、耳鼻咽頭科、日本睡眠学科の認定医などで受診できることが多いです。当クリニックでも無呼吸検査や治療導入(CPAP)を行っているで、ご相談ください。
最後に
SASは診断や治療までが難しい病気です。最近では子供のSASが増加しているとも言われています。気になる症状があれば早めの受診、検査が大きな事故につながる前の予防になります。