クリニックレター
2024.01.04
クリニックレター特別編 「震災時の肺血栓塞栓症について」
今年は、元旦から令和6年能登半島地震や翌日の日航機と海保機の衝突事故など、多くの人がお亡くなりになる出来事が起こっています。お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被害にあわれた皆様、ご家族の方々にお見舞いを申し上げます。また、地震で被災された方々は、避難所などで不安な日々が続いていますが、一刻も早い復興を心から望んでいます。
今回、特別編として、被災地で感染症以外に起こりうる肺血栓塞栓症についてお話しします。
肺血栓塞栓症とは
別名、エコノミークラス症候群とも言い、飛行機のエコノミークラスで旅行すると、狭いシートに同じ姿勢で長時間座ったままになります。すると、足の血液の循環が悪くなって、静脈に血の塊(静脈血栓といいます)が出来やすくなります。長時間の飛行機移動後、飛行機を降りて歩き始めると、静脈血栓は足の血管壁から離れ、血流に乗って肺に移動し、肺の血管(肺動脈)を詰まらせる病気の事です。
肺血栓塞栓症の症状について
血栓が突然肺の血管(肺動脈)を詰まらせ、肺の組織が壊死する事による胸痛やガス交換が出来ないために起こる呼吸困難が主症状です。また、血栓の大きさや肺動脈の詰まる箇所にもよりますが、突然死の原因となる非常に怖い病気です。
震災では、被災者が避難所以外に車中生活を余儀なくされる方が多くおられます。車中生活では、あまり動かず、同じ姿勢での生活がつづくため、エコノミークラス症候群と同様に、下肢静脈に血栓が出来て、その血栓が血液の流れに乗って、肺の血管(肺動脈)を詰まらせる要因となります。
下肢に出来た静脈血栓●が、血液の流れに乗って、下大静脈➡右房➡右室➡肺動脈へ移動し、肺動脈を詰まらせることにより、肺血栓塞栓症となります。
ポイント:左室に血栓は移動しないので、静脈の血栓は脳梗塞の原因にはなりません。
車中における肺血栓塞栓症の予防方法
①定期的な運動とストレッチ:長時間座席に座りっぱなしでいると、下肢の静脈血流が悪くなります。規則的に座りながらできる運動や足首の回し方、伸ばし方を行いましょう
②水分補給:適切な水分補給は循環を助け、血液が滞りにくくなります。アルコールやカフェインを控え、水を積極的に採るように心がけましょう。
③座席を定期的に立つ:2時間に一度は席を立ち、歩行することで血行が改善されます。車外で出来るだけ動くようにしましょう。
④適度な姿勢:良い姿勢を保つことも重要です。座席に背中をしっかりとあて、足を地面につけた状態で座るようにし、無理なくリラックスした状態を心がけましょう。