クリニックレター
2024.06.03
クリニックレターvol.92 「逆流性食道炎とバレット食道について」
皆さん、こんにちは。今回のテーマは逆流性食道炎についてです。
まず、逆流性食道炎とは、読んで字のごとく、胃の中の胃酸などが逆流して、食道粘膜を傷つける病気です。代表的な症状は胃酸の逆流による胸やけですが、嚥下困難や難治性の咳の原因ともなる病気です。今回、逆流性食道炎から生じる食道の病気であるバレット食道についても記載します。
胃酸が逆流するメカニズム
食道と胃は横隔膜で区切られ、その間は筋肉(下部食道括約筋)があり、普段は閉まった状態です。私たちが食べ物を飲み込んだ時に下部食道括約筋が緩んで、食道から胃に落ちます。ところが、何らかの原因で、食べ物を飲み込んだ時以外にこの筋肉の締まりが悪くなり、筋肉が緩むと食べ物や胃酸が食道へ逆流してしまいます。その逆流した強い酸が食道に炎症を引き起こすことによって起こる病気です。
逆流性食道炎の原因
①下部食道括約筋の機能不全
原因として、食道裂孔ヘルニアがあります。下記イラストの様に大きく分けて3種類に分類され、胃の一部が横隔膜の穴を通って食道側にはみ出してしまうものです。これは解剖学的に体質のようなもので、手術以外には治りません。
②肥満
腹部の圧力が高まり、胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。
③胃酸分泌過多
アルコール、高タンパク食、高脂肪食などは胃酸分泌を亢進すると言われています。また、喫煙も胃酸分泌を亢進させる因子の一つとなります。
バレット食道とは
胃酸が食道に逆流し、発症する病態の一つがバレット食道です。バレット食道そのものに自覚症状はありませんが、逆流性食道炎による胸やけなどが主症状となります。解剖の話になりますが、もともと、胃の粘膜は円柱上皮であり、食道粘膜は扁平上皮です。胃酸が食道に逆流し、繰り返す粘膜障害の結果、食道粘膜の扁平上皮が胃の円柱上皮に置き換わった状態をバレット食道といいます。
バレット食道は危険なのか?
バレット食道は、胃カメラの検査で確認され、置き換わった粘膜の長さが3cm未満の時はSSBE(Short Segment Barrett's Esophagus)、3㎝以上の時はLSBE(Long Segment Barrett's Esophagus)と言います。胃カメラで観察されるのはほとんど、SSBEであり、LSBEは稀です。
少し専門的な話になりますが、バレット粘膜の長さが長いほど、バレット腺がん(食道がん)のリスクは高くなり、発がんのリスクが明確なのはLSBEです。年率発がん率は、LSBEで0.33〜0.56%、SSBEで0.19%であり、LSBEが2倍以上発がんのリスクが高いと報告されています。
逆流性食道炎の治療
著効する薬もありますが、まず、生活習慣の改善からです!!
生活習慣の改善
①暴飲暴食を避け、早食いをしないことです。胸やけを起こしやすい食品(乳製品を含む脂肪分の多い食物、チョコレートなど甘いもの、柑橘類、コーヒー、アルコールなど)を控える。また、喫煙者には、禁煙などにより症状が緩和されることがあります。
②体重過多の人はダイエットなどの体重管理などが必要です。また、食べた後、すぐ横にならないようにすることです。食後2~4時間は食べ物が胃に残っているので、その状態で横になると重力の関係で逆流しやすくなります。その間は横にならないようにしましょう。
薬物療法
生活習慣の改善で、症状が改善しない場合は薬物が使用されます。プロトンポンプ阻害薬などの胃酸の分泌を強力に抑える薬が処方されます。