クリニックレターvol.93 「関節リウマチについて」

2024年6月17日

みなさんは「リウマチ」と聞くと、どんなイメージをお持ちでしょうか?関節リウマチというと、「ご高齢の方がなる病気」というイメージがあったりしませんか?実は人口の0.4~0.5%、30歳以上の人口の1%にあたる人がこの病気にかかるといわれています。今回のテーマは、身近なようで意外とご存じないかもしれない関節リウマチについてです。

関節リウマチとは

免疫系が異常に働き、自分の滑膜(かつまく)を攻撃して炎症を起こす自己免疫疾患です。
免疫とは細菌やウイルスなどの外敵を排除する身体の防衛本能のシステムですが、異常が起こると自分の身体の一部を外敵と錯覚して排除しようとしてしまいます。しかし、このシステムがなんらかの異常をきたし、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃して、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。このような病気を自己免疫疾患と言います。

滑膜は関節を覆う薄い膜で、関節内の滑らかな働きを助けるために滑液(関節液)を分泌し、関節の潤滑剤として、摩擦を減らして関節の動きを助けます。また、栄養供給、老廃物の除去も持っています。
関節リウマチは、滑膜が自己免疫異常により炎症を起こし、骨や軟骨を破壊します。結果、関節の変形につながります。

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日本での関節リウマチの患者数は70~80万人にのぼり、年齢層は幼児から高齢者までの幅広い年齢層で発症リスクはありますが、発症のピークは30〜50代の働き盛りや家事などで多忙な年齢の方々で発症することが多いと言われています。性別では女性が男性の3倍以上と、割合としては女性に多い疾患です。また、遺伝的背景から、発症しやすいことがわかっています。さらに、最近では喫煙が関節リウマチの発症や進行に大きく関わっていることが明らかになってきました。

関節リウマチの症状は?

関節リウマチでは、関節の痛み、腫れ、朝のこわばりという、3つの代表的な主観的症状があります。症状は左右対称に出ることが多く、腫れている部位がブヨブヨしていてやわらかいのも特徴です(イラストは手ですが足にも表れます)。また関節と言いながらも、全身倦怠感や微熱、食欲低下などの全身症状や、皮膚、眼、肺など、関節以外の症状が出ることもありますので注意が必要です。

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関節リウマチの検査

関節リウマチは診断が難しいと言われています。関節リウマチの診断を行う際は、関節の腫れや痛みなど自覚症状の確認を行った上で、血液検査や尿検査を行うことが基本です。採血マーカーとして、代表的な物は3つあります。

①抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体)

関節リウマチの早期診断に非常に役に立つマーカーです。病気の初期段階で検出される事が多く、重症度の指標にもなります。陽性なら関節リウマチと診断出来ます(特異度は高い)。ただ、感度は低く、検査が陰性でも関節リウマチでないとは言えません。

②リウマチ因子(RF)

関節リウマチで陽性となります。ただ、高齢者では25%程度陽性となり、他の疾患でも陽性となるため、リウマチ因子のみでは関節リウマチの確定診断にはなりません。

③MMP-3(マトリックスメタロプロテナーゼ)

特異的なマーカーではありませんが、関節や軟骨の炎症や破壊の程度を示す酵素です。治療効果のモニタリングにも使用されます。

関節リウマチの治療

消炎鎮痛剤(NSAIDS)やステロイド以外にも病態に応じて、様々治療が行われます。

①抗リウマチ薬

MTX(メトトレキサート)が代表な内服薬であり、関節リウマチにおける免疫異常を改善し、関節破壊の抑制を行います。効果発現までに2~3ヵ月かかります。

②生物学的製剤

関節リウマチに対しては2003年から国内での使用が開始されている注射製剤です。薬価が抗リウマチ薬に比べ高価ですが、画期的な効果が期待できます。ただ、効果が得られない患者さんも20~30%いると言われています。

炎症を引き起こす炎症物質のサイトカインであるIL-6(インターロイキン6)やTNFα(腫瘍壊死性因子)の働きを妨げ、関節破壊が進行するのを抑えます。生物学的製剤は、抗リウマチ薬に対して効果が不十分な場合に使用します。

生活上の注意点

症状が強い時は、安静、関節の保護が何よりも大事です。感染症(インフルエンザワクチンなども)には常に注意が必要です。喫煙や歯周病は、治療効果にも影響するため、診断された場合は禁煙し、歯周病はしっかり治療しましょう。

最後に

関節リウマチは日常生活にも不便が生じてくる病気ですが、早期に治療をはじめると、寛解(症状が落ち着いていて日常生活に支障がない状態)につながりやすいといわれています。
当クリニックでは、関節リウマチの診断および治療に関するご相談を承っております。診察や血液検査で関節リウマチを疑えば、まず、適切な治療を行っていただくため、免疫内科やリウマチ・膠原病内科のリウマチ専門医の先生に紹介も致します。少しでも気になる症状があれば、是非、ご相談ください。

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