クリニックレターvol.94 「ピロリ菌感染症について」

2024年7月 2日

皆さま、こんにちは。今回のテーマは、ピロリ菌感染症です。ピロリ菌は胃の中に生息する細菌です。正式名はヘリコバクター・ピロリですが、通称「ピロリ菌」または「ピロリ」などと呼ばれており、このピロリ菌によって引き起こされる感染症が、ピロリ菌感染症です。

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胃の粘膜に感染して炎症を起こす細菌、ピロリ菌のイラスト

ピロリ菌とは?

この細菌は、胃の粘膜に感染し、慢性的な胃炎を引き起こすことがあります。多くの人が感染しているにもかかわらず、自覚症状がないことが多いです。しかし、放置すると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクが高まることが知られています。


ピロリ菌の感染経路について

ピロリ菌の感染経路には、主に以下のようなものがあります:

  1. 口から口への接触:
    若い方の感染として、家族間での食器や歯ブラシの共有、口移しでの食事などが感染の原因になることがあります。
  2. 汚染された水や食べ物:
    衛生状態が悪い地域では、井戸の水などの汚染された水や食べ物を介して感染することがあります。
  3. 手指の接触:
    手洗いが不十分な場合、手指を介して口に細菌が入ることがあります。


ピロリ菌と胃がんとの関係

ピロリの感染は、胃がんの発症に深く関わっています。研究によると、H. pyloriに感染している人は、感染していない人に比べて胃がんになるリスクが高くなります。具体的には、H. pyloriが引き起こす慢性の炎症が、時間と共に胃の細胞に変異を起こし、がん細胞へと変化する可能性があると言われています。


ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の感染を確認するための検査方法には、以下のようなものがあります。

  1. 尿素呼気試験:特定の薬剤を飲み、呼気を集めてピロリ菌の存在を確認します。
  2. 血液検査:ピロリ菌の抗体の有無を調べることで、過去または現在の感染を確認します。
  3. 便検査:便中のピロリ菌の抗原を検出します。
  4. 内視鏡検査(胃カメラ):胃の内視鏡検査を行い、胃の組織を採取してピロリ菌の有無を調べます。

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1から3の検査を保険適用で受ける場合、注意点があります。まずは胃内視鏡検査を受け、胃炎や胃がんに罹患していないかどうかを確認することが必要です。当クリニックからも胃内視鏡検査を近隣の医院に紹介しますので、気軽にご相談ください。


ピロリ菌の除菌治療について

ピロリ菌の感染が確認された場合、除菌治療を行うことが推奨されます。除菌治療とは、抗生物質を使用してピロリ菌を胃から完全に除去する治療法です。この治療を受けることで、以下のような効果が期待できます:

  1. 胃がんのリスク低減:
    ピロリ菌を除菌することで、将来的な胃がんの発症リスクを大幅に減らすことができます。
  2. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の予防:
    ピロリ菌が原因であるこれらの潰瘍の発生を大きく防ぐことができます。
  3. 胃の健康維持:
    胃の粘膜の炎症が軽減され、胃の健康を保つことができます。

除菌治療の流れについて

除菌治療は、通常2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制薬を約1週間服用することで行います。治療が成功したかどうかは、治療終了後に再度検査を行うことで確認します。

1回の除菌治療で約90%の除菌が可能となりますが、除菌失敗例には、二次除菌治療を行います。


最後に

ピロリ菌の感染は非常に一般的ですが、早期に発見し、適切な治療を受けることで、胃がんのリスクを減らすことが可能です。胃の不調や心配な症状がある方は、ぜひ当クリニックまでご相談ください。

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