クリニックレターvol.98 「マイコプラズマ感染症について」

2024年10月 1日

今回のテーマは、マイコプラズマ感染症です。以前は秋冬にかけて増加傾向が見られていましたが、周期的な流行パターンが当てはまらなくなり、年間を通じて発生しています。また、幼児から学童期の子供たちに多く見られる感染症ですが、現在、子供だけではなく、大人にも流行しています。また、マイコプラズマ感染症から移行するマイコプラズマ肺炎は全年齢層に発生する可能性があり、大人の場合は、咳などの症状が長引いたり、重症化することがあります。

マイコプラズマ感染症とは?

マイコプラズマ感染症は、特に呼吸器系に影響を及ぼす細菌による感染症です。この細菌は、通常の細菌とは異なり、細胞壁を持たないため、一般的な抗生物質が効きにくいという特徴があります。理由はペニシリン系などの代表的な抗生物質は細菌の細胞壁を壊したり、細胞壁を作るの邪魔する作用がありますが、マイコプラズマは細胞壁を持たないため、効果が乏しいためです。

主な症状

感染初期の症状は風邪に似ており、以下のようなものが挙げられます。

  • 咳(特に乾いた咳)
  • 喉の痛み
  • 頭痛
  • 倦怠感

グラフィックス1.png

症状が進行すると、肺炎を引き起こす場合があります。特に小児では注意が必要で、熱が長引く場合や、咳が酷くなる場合は、早めの診察をお勧めします。

診断と治療法

マイコプラズマ感染症の診断には、いくつかの方法が使用されます。

  • 抗原検査: 咽頭ぬぐい液などから抗原を検出する迅速検査が可能です。これにより、早期に診断を確定し、適切な治療を迅速に開始できます。
  • 血液検査: 血中の抗体価を確認する方法もありますが、抗体が形成されるまでに時間がかかるため、感染初期の診断には適していません。
  • 胸部レントゲン: マイコプラズマ肺炎が疑われる場合、胸部レントゲンを撮影し、肺の状態を確認します。

治療には、通常の抗生物質では効果が期待できないため、以下のような特効薬として、特別な抗生物質が使用されます。

●マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシンなど)

小児や妊娠中の女性にも比較的安全で使用されます。しかし、近年ではマクロライド系に対する耐性を持つ菌が増加しているため、十分な効果が得られない場合もあります。

耐性マイコプラズマ感染症について

近年、マイコプラズマ菌に対する耐性が問題視されています。特に、従来使用されてきたマクロライド系抗生物質に対する耐性を持つ菌株が増加しており、この場合、効果が期待できない場合があります。耐性マイコプラズマ感染症に対しては、下記のテトラサイクリン系やニューキノロン系など、他の種類の抗生物質を使用することが必要です。
しかし、これらの薬剤は副作用や使用制限があるため、専門的な医師の判断が不可欠です。自己判断による薬の変更や中断は避け、医師に必ず相談してください。

●テトラサイクリン系抗生物質(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)

マクロライド耐性菌に対して効果的です。ただし、副作用のリスクがあるため、特に小児や妊婦には使用が制限されることがあります。

*耐性マイコプラズマ感染症かどうかはすぐに判断がつかないため、まず、マイコプラズマ感染症を疑えばマクロライド系抗生物質を48時間程度使用し、解熱効果がなければ、テトラサイクリン系抗生物質へ変更する方針となります。

予防のポイント

マイコプラズマ感染症は飛沫感染や接触感染で広がるため、以下の予防策を徹底することが推奨されます。

  • 手洗いをこまめに行う
  • マスクの着用
  • 体調不良時は、早めの休養と医療機関での診察

特に学校や保育園などで感染が拡大しやすいため、お子様の体調に異変を感じたら早めにご相談ください。

グラフィックス2.png

最後に

当クリニックでもマイコプラズマ感染症の診断に抗原検査を行っています。ご不明点やご心配なことがあれば、当院までお気軽にお問い合わせください。夏も終わりを告げ、これから秋から冬に向けての季節、体調管理を徹底し、元気に過ごしていただければと思います。

ページトップへ戻る