クリニックレターvol.99 「慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは」

2024年10月15日

秋の季節は、乾燥や昼夜の急激な寒暖差によって、咳が増加しやすい時期です。長引く咳や息切れは、非常に辛い症状で、日常生活に大きな影響を及ぼします。今回は、そのような長引く咳や息切れの原因となりうる病気の一つ、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」についてお話ししたいと思います。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

COPDは、Chronic(慢性) Obstructive(閉塞性) Pulmonary(肺の) Disease(疾患) の略で、慢性気管支炎や肺気腫を含む病気の総称です。一般的に患者さんの90%以上が喫煙者であり、長期にわたる喫煙によって、気管支の炎症や肺胞の破壊が引き起こされ、徐々に呼吸機能が低下する病気です。特に40代以降に多く見られます。
世界保健機関(WHO)の調査によると、2019年時点での世界における死因ランキングで3位となっており、厚生労働省や日本呼吸器学会の統計によれば、2021年には日本国内でCOPDによる死亡者数が16,384人にのぼり、男性の死亡原因の第9位を占めています。
COPDの初期症状は非常に軽微であることが多く、患者さん自身が気づかないまま病状が進行するケースが多いです。これにより、適切な治療が遅れ、症状が悪化することが少なくありません。

グラフィックス1.png

COPDになるとどういう症状になるのか

長引く咳や息切れが生じる原因と、よく「気管支喘息」と混同されることがあります。気管支喘息は花粉やハウスダスト(家のホコリ)、動物の毛などによるアレルギーが原因で生じる気管支の炎症性の病気です。わかりやすく解説すると下記のような特徴や違いがあります。

スクリーンショット 2024-10-15 093646.png

グラフィックス2.png

在宅酸素療法(HOT: Home Oxygen Therapy)とは

COPDが進行すると、日常生活の中で酸素が十分に体に取り込めなくなり、慢性的な低酸素状態に陥ることがあります。そのため、多くの患者さんにとって在宅酸素療法(HOT)が必要になることがあります。実際、COPDは在宅酸素療法が必要となる疾患の第1位です。在宅酸素療法は、自宅で酸素を吸入しながら生活することで、酸素不足を補い、体の機能を維持する治療法です。患者さんは酸素吸入装置を使って日常生活を送り、体力の低下を防ぎます。この療法を導入することで、生活の質を向上させることが期待できます。

グラフィックス3.png

COPDはなぜ死因になり得るのか

COPDは肺の病気ですが、影響は肺だけにとどまりません。COPDの患者さんは、肺がんだけでなく、虚血性心疾患、骨粗鬆症、糖尿病など、全身にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。また、長期の喫煙歴がある中高年に発症するため、喫煙や加齢がリスク要因として重なり合い、全身への影響が大きくなることが多いです。

どのように検査するのか

上記のような症状がある場合、当院でも検査を行っています。最も重要な検査は肺機能検査で、特に「スパイロメトリー」と呼ばれる検査を用いてCOPDの診断を行います。また、胸部レントゲン検査も併せて実施し、場合によっては血液検査やCT検査も行うことがあります。早期発見と早期治療が非常に重要なため、40歳以上の喫煙者や喫煙歴のある方は、症状がなくても一度検査を受けることをお勧めします。

スクリーンショット 2024-10-15 093857.png

最後に

COPDの予防には「禁煙」が最も有効です。日本では戦後から1970年代にかけて紙巻きたばこの消費量が増加しましたが、近年は加熱式タバコの利用も広がっています。しかし、加熱式タバコについてはまだ十分なデータが蓄積されておらず、その影響が明らかになっていません。禁煙に関する不安や質問がある方は、ぜひ当クリニックにご相談ください。

ページトップへ戻る