クリニックレター
2024.11.18
クリニックレターvol.101 「膵炎について」
秋は気温の変化が大きく、体調を崩しやすい季節です。気温差が大きいと免疫が低下し、風邪や胃腸炎などにかかりやすくなると言われています。
特に、季節の変わり目にはお腹の痛みや不調を感じる方が増えますが、これらの症状の原因として「膵炎」が関係していることもあります。
膵炎はあまり知られていない疾患ですが、早期の発見と対策が重要です。この機会に、膵炎の特徴や注意すべきポイントについて知っていただければと思います。
膵臓(すい臓)とは
膵臓は胃の下、後ろ側にある10〜15cmの小さな臓器で、内分泌機能と外分泌機能の2つの役割を持っています。
内分泌機能
ベータ細胞で血糖を下げるホルモン「インスリン」が作られます。
外分泌機能
食べたものを消化する膵液を分泌します。膵液には以下の消化酵素が含まれています。
- 糖を分解する「アミラーゼ」
- タンパク質を分解する「トリプシン」
- 脂肪を分解する「リパーゼ」
これらの機能が低下すると、糖尿病や消化吸収障害などの問題が生じる可能性があります。膵臓の外分泌機能に関する代表的な病気には急性膵炎と慢性膵炎があります。
膵炎について
膵炎には急性膵炎と慢性膵炎の2種類があります。
急性膵炎
激しい上腹部痛が突然生じる疾患で、2016年の全国調査では年間約78,450人が発症しています。通院での治療は難しく、ほとんどの場合緊急入院が必要です。その痛みは、尿路結石や心筋梗塞と並ぶ3大激痛の一つに数えられます。
慢性膵炎
長期間にわたり腹痛や背部痛などの症状が続き、正常な膵臓細胞が破壊され繊維組織に置き換わることで、消化吸収不良や糖尿病などが徐々に進行する疾患です。2016年の推定発症者数は約56,520人とされています。
詳しくは「日本消化器病学会」の患者さん用冊子「慢性膵炎について」でも解説されています。
厚生労働省全国調査(2016年より)
なぜ膵炎になるのか
膵炎になりやすい要因として、特に飲酒量が多いこと、脂っこい食べ物を好むことが挙げられます。急性膵炎の最も多い原因は飲酒であり、慢性膵炎も約8割が長年の飲酒によるものです。アルコールや食事の脂肪は膵臓に負担をかけ、アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンといった消化酵素が血液や尿に漏れることで検査で異常が見られることがあります。
厚生労働省全国調査(2016年より)
検査や治療
膵炎は問診、腹部エコー、血液検査などで診断します。必要に応じて専門医療機関でのCTやMRI、内視鏡検査も行われることがあります。
急性膵炎
緊急入院が必要で、絶食とともに点滴や治療薬を使用して痛みを抑えます。
慢性膵炎
禁酒・禁煙が基本となり、痛みを抑える薬や、必要に応じて膵石の除去やステント挿入などが行われる場合もあります。
最後に
膵臓は異常があっても自覚症状に現れにくく、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。慢性膵炎を長期間放置すると膵がんのリスクが高まります。慢性膵炎の診断から2年以上経過した方は、健康な人に比べ膵がんのリスクが11.8倍になるとされています。また、膵臓の機能は一度悪化すると元には戻りにくいため、少しでも気になる症状があれば早めのご相談をおすすめします。