クリニックレター
2024.12.02
クリニックレターvol.102. 「膵癌(すいがん)と膵嚢胞(すいのうほう)ついて」
こんにちは。膵臓(すいぞう)は皆さんにとってあまり馴染みがありませんが、非常に重要な臓器です。今回は、長文になりますが、最後までお付き合いください。
前回は、膵炎について解説しましたが、今回は、膵臓疾患の代表例である膵癌(すいがん)と膵嚢胞(すいのうほう)(特に膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう):IPMN)について解説させていただきます。
膵臓は、胃の後ろにある臓器で、消化酵素を分泌したり、血糖値を調整するホルモン(インスリンなど)を作る重要な役割を担っています。膵臓に出来る悪性腫瘍が膵癌です。
膵癌(すいがん)の特徴
症状が出にくい
膵癌は初期段階ではほとんど症状がありません。そのため、発見時には進行していることが多いです。
症状が出たときには進行している場合が多い
症状として以下が現れることがありますが、これらが現れた時点でがんが進行しているケースが少なくありません。
- 背中や上腹部の痛み
- 黄疸(おうだん)(皮膚や目が黄色くなる)
- 体重減少
- 食欲不振
発見が遅れる理由
膵臓は体の奥深くに位置しており、定期的な健康診断でも見逃されることがあります。また、症状が他の病気と似ているため、膵癌と気づかれるのが遅れることも少なくありません。
膵癌(すいがん)を早期に発見するために
膵癌のリスクが高い方や膵臓に異常が見つかった場合には、早めの検査が重要です。
以下の条件に当てはまる方は特に注意が必要です
- 家族に膵がんの患者がいる
- 糖尿病が急に悪化した
- 慢性膵炎の既往がある
- 喫煙習慣がある
CTやMRI、腫瘍マーカー(CA19-9など)を用いた検査が、早期発見に役立ちます。また、膵嚢胞(すいのうほう)(特にIPMN)の定期的な経過観察も、膵がん予防につながります。
MRI(CTスキャン)を受けている女性のイラスト
次に、近年、健康診断や人間ドックの普及によって発見されることが増えている「膵嚢胞(すいのうほう)」についてお話しします。特にその中でも重要な「膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう):(IPMN)」についても解説します。
膵嚢胞(すいのうほう)って何ですか?
嚢胞(のうほう)とは、液体がたまった袋のようなものです。肝臓や腎臓にも嚢胞がある場合がありますが、一般的に黒子(ほくろ)の様なイメージで経過観察してくださいというケースが多いです。ただし、膵臓に嚢胞があれば話は別になります。
膵嚢胞は健康診断などで見つかることが多いですが、ほとんどは無症状です。膵嚢胞の種類によっては、定期的な経過観察が必要な場合や、がん化のリスクがあるものもあります。
特に注意したい「膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう):(IPMN)」
IPMNは、膵臓の中にある膵管にできる嚢胞の一種で、粘液を作る細胞が増えることで発生します。IPMNは以下の特徴があります。
主膵管型(しゅすいかんがた)と分枝型(ぶんしがた)
- 主膵管型:膵臓の中心にある「主膵管」に発生し、がん化するリスクが高いです。
- 分枝型:主膵管から分かれた枝の部分に発生し、がん化のリスクは比較的低いですが、経過観察が必要です。
症状がなくても注意が必要
多くの場合、症状がないまま進行するため、画像検査で早期に発見することが大切です。
がん化のリスク
主膵管型や膵管が大きく広がっている場合、また嚢胞内(のうほうない)にしこり(結節)がある場合は、がん化のリスクが高まります。
膵嚢胞(すいのうほう)が見つかったらどうすればいい?
膵嚢胞(すいのうほう)が見つかった場合は、以下のように対応します。
まずは検査を受ける
CTやMRI (MRCP)、必要に応じて超音波内視鏡(EUS)などの精密検査を行い、の種類や大きさ、の状態を確認します。
治療が必要かどうかを判断
- 経過観察:分枝型IPMNや小さな嚢胞(2~3cm未満)の場合、多くは定期的な経過観察で問題ありません。
- 手術が必要な場合:がん化の可能性がある場合や膵管の拡張が著しい場合は、専門医と相談のうえ治療を行います。
症状が出たらすぐに相談
3.腹痛、背中の痛み、黄疸(おうだん)(皮膚や目が黄色くなる)、急激な体重減少などが現れた場合は、すぐに医師に相談してください。
健康を守るために
膵嚢胞(すいのうほう)の予防方法は確立されていませんが、膵臓の健康を守るためには以下を意識しましょう。
- 生活習慣の改善: 禁煙、節度ある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動が推奨されます。
- 体重管理: 肥満はリスクを高めるため、適正体重の維持が重要です
- 持病の管理: 糖尿病や慢性膵炎などの持病を適切に管理することが予防につながります。
- 早期受診: 不安な症状がある場合は早めに医療機関を受診することが推奨されます
まとめ
膵嚢胞(すいのうほう)はほとんどの場合、経過観察で済むものですが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう)(IPMN)のようにがん化リスクがあるものもあります。健康診断で膵嚢胞(すいのうほう)が見つかった場合は、早めにご相談ください。当院では、市立東大阪医療センターを中心に膵臓の検査(MRI)や専門医との病診連携も行っております。
何か気になる症状や検査結果があれば、ぜひ当院にお問い合わせください。